この前紹介した「きぬかけの径」の、立命館衣笠キャンパスの前にこの美術館はある。ヨーロッパの絵本に出てくるような真白い、お菓子のような美術館。立命の新キャンパスが生まれたのと同じ頃、1966年にこの美術館は開館した。御室仁和寺や、竜安寺から金閣寺方面へと歩いて行くと突然、緑の丘のふもとにこんな建物が現れる。
いつもは素通りしてばかり。やっと入って、見ることができた。
そもそも「堂本印象」という人の名は、ボクの場合、この美術館から覚えた。その名前といい、この建物といい、てっきりミロのような抽象画の芸術家と思い込んでいた。が、この美術館に行って初めてこの人の初期の作品から見ることができた。日本画家としてのスタート期、寺院などの障壁画の世界、そして洋画の世界から晩年の抽象画の世界へと辿れる。
といっても、パーマネントコレクションのように、堂本印象の多くの作品が見られる訳ではない。普段は季節のテーマに合わせて、京都の作家の作品などを展示している。印象の人気作を多く見られるのは、年末の「名品展」の時だけらしい。
しかし見所は、この美術館そのものだ。もともとは堂本印象が個人で建てた美術館。今は京都府立となっているが、ドアの把っ手も、窓のステンドグラスも、庭のベンチも、館内の椅子も、エントランスの柱もみんな堂本印象のデザインで、印象の童話の世界に入ったような空間だ。今のところ、映画にも、CMにも出てこないから、それほど有名なスポットではないらしい。
時間のある時ふらっと来て、煙草を吸う人は、庭のベンチでゆっくり時間を過ごす。そうした「大人の修学旅行」にぴったりの場所だ。
炎天に くらむがごとし 抽象画