「おせきもち」というのを食べた。やわらかな白いお餅、または、よもぎ餅の上にきめの細かい粒あんがのっている。ただ、それだけ。伊勢の名物「赤福」のようなお餅。丹波大納言のあんは、さっぱりと甘すぎず、上品な味。
お店は名神南インターの南側、1号線の城南宮の向かいにある。鳥羽街道名物として、その創業は450年前にさかのぼるという。1564年頃といえば川中島の戦いのあたり。江戸時代の東海道の旅行ブームになるよりずっと以前からこの茶屋はあったことになる。
そもそも城南宮をはじめこのあたりは貴族たちの別荘地として名高い地。平安京が造られた頃から都の羅生門まで、大きな道がつながっていたらしい。都への人や物資が往来する交通の要衝の地だったのだ。最近では、幕末、鳥羽伏見の戦場として知られている。
そうした鳥羽街道の茶屋で、この「おせきもち」は提供されてきた。東海道が大阪まで伸び、鳥羽宿でもあれば、安藤広重はこの茶屋の風景を描いていたかもしれない。
もうひとつの「売り」であるらしい、おはぎも食べたが、こちらはこしあんで餅米もきめ細かく、やさしい味だった。支店はなく、百貨店などにも店を出していないという。しかも月・火曜日はお休み。なんとも商売っ気のないマイペースなお店なのもいい。
冬を脱ぎ 歩きだす道 おせきもち
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